バイエルン国立管弦楽団 特別演奏会

September 19, 2017

台風18号が九州・四国・本州を縦断した17日、都民劇場(昭和21年創立、日本の鑑賞団体の草分け的存在)主催による「バイエルン国立管弦楽団 特別演奏会」を東京・上野の東京文化会館大ホールで聴いてきました。


 

 

マチネーのオーケストラ公演でしたが、東京も雨。しかし、そんな生憎の天候もなんのその、むしろ高揚感が会場には感じられました。というのも、この日指揮台に立ったロシア出身の指揮者キリル・ペトレンコさん(Kirill Petrenko, 1972~)は、世界最高峰のオーケストラであるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の次期首席指揮者・芸術監督として2019年より就任することが2015年に発表され、クラシック音楽界で大きな話題になった方で、しかもこの来日公演が初来日であったことによると思います。

 

ペトレンコさんは以前からオペラ指揮者として名の知られる存在だったと思いますが(現在は名門バイエルン国立歌劇場の音楽総監督で、同歌劇場のオーケストラのみによる当特別公演後、オペラ公演等が東京で行われる模様)、コンサート指揮者としては日本ではまだまだ未知数に近く、一体どんな演奏を披露してくれるのだろうと、この日会場に足を運んだ皆さんはきっと大いにワクワクしていたのではないでしょうか。

 

プログラムは、ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」(ピアノ独奏、イゴール・レヴィット)とマーラーの「交響曲第5番」の2曲。その両曲とも、「おお~、そうきますかー!」と唸らされた、期待を上回る、とても独創性高い演奏でした。

 

ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」でピアノ独奏を務めたロシア出身のイゴール・レヴィットさん(Igor Levit, 1987~、彼の初来日は2012年)の音は暖色的で柔軟性があり、ロシア系マッチョな演奏とは一線を画すものがありました。「パガニーニの主題による狂詩曲」はピアノ協奏曲的なスタイルの作品ですが、レヴィットさんのピアノはオーケストラと対峙して華麗なヴィルトゥオーゾを前面に押し出すのではなくて、むしろオーケストラと積極的に溶け合って一体化し、まるでオーケストラに編み込まれた1つの楽器であるごとく演奏されていたのがとても印象的でした。「このパガニーニの主題による狂詩曲」が、主題と24の変奏からなる有機的な「交響的変奏曲」たる書法の曲であることを、これ程強く感じられたのは初めてのことです。

 

また、ペトレンコさんの指揮が実にユニークで、主要旋律部と土台としてのバス声部の枠組みをしっかり固めた上で、一般的には目立たない内声部を浮かび上がらせたり、何気ない楽句を強調したり、インパクト強く立体的で高密度、高カロリーな音楽を作り上げていました。それらは恣意的では決してなく綿密に計算されたものでしょうが、その個性的解釈はレヴィットさんをはじめオーケストラ団員に見事に浸透し、共感を得て極めて音楽的な表現へと昇華されていたと思います。まるでかつての東ドイツのオーケストラのような重心の低い重厚な響きを醸したバイエルン国立管弦楽団の、歌劇場専属オーケストラという特質による歌心のみずみずしい発露がとても素晴らしかったと思います。

 

レヴィットさんはアンコールに応えてワーグナー(リスト編曲)の「イゾルデの愛の死」を演奏。これは実に知的な橋渡し的選曲で、「パガニーニの主題による狂詩曲」でラフマニノフが引用したグレゴリオ聖歌「ディエス・イレー(怒りの日)」が〝死〟を象徴するものであり、また、後続のプログラムであるマーラーの「交響曲第5番」の第1楽章が「葬送行進曲」であることを踏まえてのことでしょう。

 

マーラーの「交響曲第5番」ではペトレンコさんの指揮はより能動的かつパッショネートで、オーケストラと聴衆をグイグイと自らの世界に引き込んでゆく力感と推進性を兼ね備えたものでした。先のラフマニノフ同様、内声部を浮かび上がらせた独特のバランスによる対位的な表現や濃やかなアゴーギクが大いに雄弁で、マーラーの音楽の「俗」と「聖」といった両極端な特質を、まるで熱に浮かされたように生々しく描き切り、ひと時も弛緩することのない緊張感と充実した音楽表現をオーケストラから巧みに引き出していました。オーケストラはパワフルでうねるような駆動感が圧巻だったものの、更に機能的洗練が欲しいなあと思う部分や、緩徐楽章では憧憬的表現が加わればより奥行き感が深まったのではと思うところもありましたが、これまで実演などで数多く聴いてきたマーラーの「交響曲第5番」の演奏の中でも、最も魅力的にして説得力のある演奏の一つだったと思います。

 

ちょっと忘れられない演奏を聴いた後、とんぼ返りで帰阪する予定だったのですが、台風が近畿に迫ろうとしていた時間帯でもあり、予約していたLCCが定刻を大幅に過ぎて何とか22時半頃に成田を離陸(しかし、よく飛んでくれました‥)、関空に着いたのは翌日に日付が変わってからで、大幅に航空ダイヤが乱れた関空にはフライト待ちの人が大勢いらっしゃいました。帰宅のため乗りたかった南海電車の終電も既になく、関空のロビーで足止めを食らったまま、仕事で依頼された原稿の構想を練りつつ、始発待ち。。

 

ようやく始発に乗るべく向かった早朝の関西空港駅では、まるでラピートルジャーが「よっ、朝帰り、お気をつけなすって下せー」と言ってくれているようでした。

 

 

 

 

 

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